今日でも聖人として敬われている 
孔子のような人格者が、 
生涯定まった住処(すみか)も持てず、 
放浪生活を続けたことを、 
井上靖さんの作品「孔子」で教えられました。 

弟子の子路は、 
食うや食わずの師の姿に納得がいかず、 
ある時、孔子に 

「君子といえども窮するのですか」 
と問います。 

その問いに対する孔子の答えは 

「君子、固(もと)より窮す。 

小人、窮すれば、斯(ここ)に濫(みだ)る」 

でした。 


普通の人間は、経済的に困ったり、 
困難に見舞われると、 
自分を律することができなくなりますが、 
そういう時にも決して乱れないのが 
君子だというのです。 


困難に耐える力は、 
小さなことに喜びを感じることによって育ち、 
身に付くと確信します。 


小さな喜びを感じとれない人は、 
小さな苦しみを大きく受け止めてしまいます。 


小鳥のさえずり、 
一輪の花にも感動し、 
ちょっとした人さまの好意にも 
感謝できる人の心には余裕があり、 
大きな困難を小さく受け止める 
智恵が湧いてきます。 


憂さ晴らしをしなければならない 
生き方をしていては、 
豊ではあっても幸せではありません。 

心ならずも生じた辛苦を受け止め、 
心の中で昇華していけるようにしたいものです。  


※鍵山秀三郎著   
「掃除に学んだ人生の法則」より転載