2012/4/5 ある朝の出来事


その日はいつものように穏やかな朝から始まった。

私の妻は朝が早い。
7時前にはバタバタと家のこと、身支度を済ませ仕事へと出かけていった。

私はいつものように妻を見送ったあと、朝食を済ませコーヒーを1杯飲み干すと、時計を見た。

7時20分。

「さて、こどもたちを起こすか」


こどもたちを起こすのは私の仕事である。

こどもたちの元へ向かい、声をかける。

「おはよう」

「・・・・・・・・・・」

返事がない。もう一度「おはよう」と声をかけ、二人のこどもの姿を確認しようとのぞきこんだ。


そこには、

寝ているのでなく、倒れこんでいるこどもたちがいた。
こどもたちの上にひもの絡んだ緑の柱が覆いかぶさっている。
今にもおしつぶされそうだ。


「ふさなりっ、あいこっ」

私はあわてて二人にかけより、柱をどけ体をゆさぶった。
返事がない。

冷たくなっている。

「ふさなりっ、あいこっ」とふたたび叫ぶ。

「と、とうさん」

ふさなりが目を覚ました。

身長はそんなにないが、妹のあいこよりは体が太いふさなりは、かろうじて意識を取り戻した。

「待ってろ、とうさんが今助けてやるからな。」

助けを呼ぶにも妻はとっくに家を出ていない。
しかし私一人の力では二人を抱えることはできない。
道具が必要だ。


私は全力で部屋に戻った。
リビングで何か役に立ちそうなものを探す。


探す? 

リビングはいつものようにきちんと整理整頓されている。
几帳面な妻は片づけ上手だ。
『整理整頓のコツは、全部の物に居場所を作ってあげること』

妻の言葉が頭をよぎる。
そう、我が家のリビングのものはすべて、いつもの場所にいつものように置かれている。
私も4年、この家に住んでいるのだ。
どこになにがあるかは把握している。


ここには役に立ちそうなものはい。

そう判断して私はロッカーに直行した。
ひもとカッターを手にする。

しかし、これだけでは二人を支えられない。

次にキッチンに向かう。
棒が必要だ。しかし、見つけたのは割り箸。
こころもとなかったが、時は一刻を争う。
割り箸を2本つかみとり、急いで二人のもとへ急いだ。






まずはあいこだ。

そっと体を抱きかかえる。
「さあ、とうさんにつかまれ!」
首や腕がぐったりしている。腕は変色しているようにも見えた。

急がなければ。

割り箸を地面に刺し、ひもを巻く。
はやる手が震える。

あいこの体に2回グルグルと巻き固定する。

「とりあえずはこれでいい。
次にふさなりだ。」

同じように体を起しひまを巻きつけた。

「元気になれよお。」心の中で祈る。










よし!
今私にできることは全てやった。

あとは、あとは、・・・・・・・。


時計を見ると
8時10分。




ああぁ、早く仕事にいかねば。


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緑の柱がふさなりとあいこの体に覆いかぶさる

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地面にたおれた あいこ
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応急処置の終わった あいこ

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応急処置の終わった ふさなり

みなさんの家庭は強風の影響はありませんでしたか?