ある山奥に、心の優しい赤鬼が住んでいました。  

人間と仲良くしたいけれど、  
自分の思いを受け入れてもらえない赤鬼のために、  
友だちの青鬼は一計を案じます。  

二人で芝居をしようと提案をするのです。    

「まず、村で、僕(青鬼)が暴れる。   
そこへ君(赤鬼)がやってきて、僕(青鬼)を追い払う。        
すると、人間は君(赤鬼)を信用するようになる」    

という筋書きの芝居です。    

「それでは青鬼くんにすまない」  

としぶる赤鬼を青鬼は、村に無理やり引っ張っていって、  
この計画は成功しました。    

赤鬼は願いどおり村の人たちと仲良くなれます。      


でも、青鬼はそれっきり姿を見せなくなりました。  

あの芝居のときに、わざと自分で柱に額をぶつけて  
具合を悪くているのかもしれないと心配した赤鬼は、  
ある日、青鬼の家を訪ねてみます。  

しかし、青鬼の家の戸は固くしまっていました。  

その戸のわきに、手紙が貼りつけてあるのを赤鬼は見つけます。  


「アカオニクン、ニンゲンタチトハ ドコマデモ ナカヨク    
マジメニ ツキアッテ タノシク クラシテ イッテ クダサイ。   
ボクハ シバラク キミニハオメニカカリマセン。   

コノママ キミト ツキアイヲ ツヅケテイケバ、ニンゲンハ、   
キミヲ ウタガウ コトガ ナイトモ カギリマセン。      

ウスキミワルク オモワナイデモ アリマセン。      

ソレデハ マコトニ ツマナラナイ。      

ソウ カンガエテ、ボクハ、コレカラ タビニデル コトニ シマシタ。    

ナガイ タビニ ナルカモ シレマセン。    
ケレドモ、ボクハ、イツデモ キミヲ ワスレナイ。      

ドコカデ、 マタ アウ ヒガ アルカモ シレマセン。      

サヨウナラ。   
キミ、カラダヲ ダイジニ シテ クダサイ。       
ドコマデモ キミノ トモダチ          
              アオオニ」                              

赤鬼は、黙ってそれを繰り返し読みました。     

そして、戸に手をかけ、顔をおしつけ、涙を流すのでした。